KAATについて

芸術監督 長塚圭史からのごあいさつ

大国に強権を振るうトップが再び登場し、今度は大富豪を参謀に従え、全てが経済の下にあるという風潮が世界を席巻しています。確かに経済なくして生活はありえません。そうした中、厳しい現実から少しだけ離れて潤いを見出す役割のみならず、「そもそもこの世界とは何か?」ということを見つめ直す機会を、劇場は生み出すことが出来ます。問い続けることこそ私たちの社会を豊かにするヒントではないでしょうか。KAAT神奈川芸術劇場は、楽しく面白く、そして時に辛辣な「問い」に溢れるひらかれた劇場であるよう努めていきたいと思います。

KAAT神奈川芸術劇場は、2025年度も、県民の皆さん、地域の皆さん、そして上演を楽しみにしてくださっている全ての皆さんに、劇場の豊かさを知っていただくべく、3つの柱のもとに歩んでいきます。
1つ目は、1年の前半をプレシーズン、後半をメインシーズンと称したシーズン制。4月からのプレシーズンは新しい試みに満ちた作品をご用意します。今年度は日本初演となりますデヴィッド・ボウイの遺作とも言われているミュージカル作品をお届けします。夏には毎年恒例のKAATキッズ・プログラム。今年はSPAC静岡県舞台芸術センターと共に2作品を上演します。KAATからは絵本を元にした少女が自らのルーツを探る冒険譚を。そして9月からの半年間はメインシーズン。シーズン制は、劇場にリズム感、季節感を生み出します。春になると劇場が動き出し、夏には子供たちの声が溢れ、メインシーズンにはタイトルがどんと現れ、何やら新しいことが始まる雰囲気が広がっていきます。
2つ目は劇場を“ひらいて”いくこと。ただ劇場の中で待つだけではなく、大きくその扉をひらき、時には飛び出そう、と。劇場の玄関口であるガラスに囲まれたアトリウムをより開放的で、発想豊かな場所にします。また2021年に創刊した季刊誌 神奈川芸術劇場 「KAAT PAPER」は、劇場と地域、県内の方々との出会いの場。様々な角度から社会と劇場との関係を見つめます。
そして今年度はご好評を頂いている神奈川県内を舞台に、地域の名所、土地土地の神々や民話を取り込んだオリジナルのストーリーを軽演劇として県内各地で上演するKAATカナガワ・ツアー・プロジェクトの第3弾を上演します。今回はあの三蔵法師一行が神奈川県に戻ってきます!
そして3つ目が「カイハツ」。これは劇場が常に考える場所であり、豊かな発想を生み出せる場となるよう、アーティストに思考や実験の場を提供したり、また劇場の未来につなぐための情報を集めてアーカイブしておいたりする活動です。今回はいよいよ次年度の公募を実施し、たくさんのご応募をいただきました。厳選された3つのプロジェクトが企画・人材カイハツとして採用されました。今年度もカイハツで新しい発想や出会いが生まれることを期待しています。そして国内外新旧戯曲を調査し、リーディングを通して理解を深め知見を広げ、未来の劇場のプログラムを思考する礎となる戯曲カイハツも昨年度より活発に動き出しました。昨年11月にKAATで上演され今年2月から3月にかけてスコットランドでも上演されました英国のカンパニーVanishing Pointとの日英国際共同制作『品川猿の告白 Confessions of a Shinagawa Monkey』は創作カイハツとして長い時間をかけて作り上げました。スコットランド公演も大変好評を得まして、これから世界各地で上演されていくことが期待されます。

そして皆様にご愛顧いただいております神奈川県民割引は今年も全ての主催公演で実施します。破格の学割も引き続き販売。そして今年度からはメインシーズンをより一層楽しんでいただくためのシーズンチケットからKAATメインシーズンパスポートへと生まれ変わります。なんとメインシーズンの全作品がご覧いただけるというお得なパスポートです。特典も含めてお楽しみください。

そんなKAATメインシーズンパスポートも待ち遠しい2025年度のメインシーズンのタイトルは「虹」。「レインボウ」と読みます。多様な人々を繋ぎ、越境する七色の架け橋です。急速な変化を続ける時代から目を背けず、世界の煌めきも綻びも捉えるシーズン「虹~RAINBOW~」にご期待ください。

また、去る3月31日をもちまして神奈川県民ホールが休館しました。その創造に挑んできた歴史に大いなる敬意を表したいと思います。その精神を受け継ぎながらKAATは、中区、横浜市、神奈川県の皆様に深く愛され、さらには日本のみならず世界にも期待される劇場となるべく歩んでいきたいと思っております。

今年度もKAAT神奈川芸術劇場を大いにお楽しみください。

KAAT神奈川芸術劇場芸術監督
長塚圭史

長塚 圭史(ながつか けいし) [劇作家・演出家・俳優]

長塚 圭史
撮影:細野晋司

劇作家・演出家・俳優。1975年5月9日生まれ。1996年早稲田大学在学中に演劇プロデュースユニット「阿佐ヶ谷スパイダース」を結成し、作・演出・出演の三役を担う。2017年に劇団化。2011年、ソロプロジェクト「葛河思潮社」を始動、2017年には、福田転球、大堀こういち、山内圭哉と新ユニット「新ロイヤル大衆舎」を結成。

2004年第55回芸術選奨文部科学大臣新人賞、2006年第14回読売演劇大賞優秀演出家賞受賞。
2008年9月から1年間 文化庁・新進芸術家海外研修制度にてイギリスに留学。
2019年4月よりKAAT神奈川芸術劇場芸術参与。
2021年4月、KAAT神奈川芸術劇場芸術監督に就任。

KAAT神奈川芸術劇場での作品
2011年1月 葛河思潮社 第一回公演『浮標』(演出・出演)
2013年9月 葛河思潮社 第三回公演『冒した者』(演出・出演)
2014年9月 葛河思潮社 第四回公演『背信』(演出・出演)
2016年4月 白井晃演出『夢の劇 -ドリーム・プレイ-』(台本・出演)
2016年8月 葛河思潮社 第五回公演『浮標』(演出・出演)
2017年10~11月 『作者を探す六人の登場人物』(上演台本・演出)
2018年9~10月 白井晃演出『華氏451度』(上演台本)
2018年9月 阿佐ヶ谷スパイダース『MAKOTO』(作・演出・出演)
2018年11月 『セールスマンの死』(演出)
2019年12月 『常陸坊海尊』(演出)
2021年1月 『セールスマンの死』(演出) ※再演
2021年5~6月 新ロイヤル大衆舎×KAAT『王将』-三部作‐(構成台本・演出・出演)
2021年9月 『近松心中物語』(演出)
2022年2月 KAATカナガワツアー・プロジェクト 第一弾『冒険者たち ~JOURNEY TO THE WEST~』(上演台本・演出・出演)
2022年9月 ミュージカル『夜の女たち』(上演台本・演出)
2023年2~3月 『蜘蛛巣城』(出演)
2023年9~10月 『アメリカの時計』(演出)
2024年2~3月 KAATカナガワツアー・プロジェクト 第二弾『箱根山の美女と野獣』『三浦半島の人魚姫』(作・演出・出演)
2025年2月 KAAT×新ロイヤル大衆舎 vol.2『花と龍』(演出・出演)

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