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主催事業情報 2024/6/4 「カイハツ」プロジェクト 活動報告

カイハツロゴ画像

 

カイハツ(ロゴ画像)」とは?

KAATが長塚芸術監督のもと、2021年度より取り組んでいる、新たなプロジェクトです。       
劇場が常に考える場、豊かな発想を生み出す場となることを目指し、クリエーションのアイディアをカイハツしていきます。新たな表現の実験、ジャンルを横断したアーティストの交流、様々な情報の収集など、以下のようなカイハツ活動を軸にして、劇場の創造活動の核を育てていくことを目指します。

◆企画・人材カイハツ

アーティストがその構想を試み、新たな出会いをもつ場として、上演を最終目的としない自由かつ実験的なクリエーション活動を行うことができる機会と空間を設けます。アーティストにとってはアイディアの種を試し育てる機会となり、劇場にとっては、新しい才能と出会うきっかけとなります。

◆戯曲カイハツ

国内外の戯曲発掘および情報収集、海外戯曲の翻訳等を行い、時にリーディング試演を交えながら、作品への理解・戯曲へのリテラシーを深め、豊かな発想の土壌を育んでいきます。

◆創作プロセスカイハツ

じっくり時間をかけて作品をクリエーションしていく新しい創造形態を模索します。戯曲・楽曲製作、ワークショップ、トライアウト公演などを実施。稽古場と上演会場を持つ劇場の強みを生かし、数年間かけて作品を熟成させる創作過程を充実させ、豊かな成果を生み出します。

 

2023年度 実施記録

◆企画・人材カイハツ

 

▶ 演出家・田中麻衣子企画

企画・人材カイハツ:演出家・田中麻衣子企画写真

【テーマ】日本未上陸の海外ミュージカルへの取組み。実験的な作品の上演の可能性、そして新たな演出や音楽の可能性を探る。  
 

【開催日】2023年4月17日(月)-21日(金)

【会 場】大スタジオ(4/17)、アトリエ(4/18~21)

【参加者】田中麻衣子(演出)

俳優ほか9名

【概要・成果】

2022年度に行った同企画の2回目。 
新たなアプローチに加え、1回目に得た発想をさらに広げ、新たな演出や音楽、訳詞の可能性を探ることを目的におこなわれました。 最終日には、KAAT内部に向けた短いショーイングを行い、コメントをもらうことで、さらに作品への理解を深めることになりました。参加者全員が意見やアイデアを自由に発言、共有し、実際に試行する時間は、新たな表現の可能性を広げるものになりました。

 

 

▶ 演出家・大澤遊企画

企画・人材カイハツ:演出家・大澤遊企画写真

【テーマ】日本未上陸の海外戯曲への取組み。言語が一つのテーマとなる実験的な作品の日本語上演の可能性、新たな演出の可能性を探る。 
 

【開催日】2023年12月19日(火)-25日(月)(22日・23日休み)

【会 場】大スタジオ

【参加者】大澤遊(演出)

俳優ほか5名

【概要・成果】

翻訳台本(粗訳)の本読みをし、戯曲から言語自体に関する疑問や解釈、発見を、参加者全員で共有するところから始まりました。言語間の移行の際に生まれる矛盾などを整理、検討し、日本語として成立させるための試行錯誤を繰り返しました。言語学者に話を伺うなど、言語自体への理解を深める機会も設け、参加者の俳優たちからは、今後の俳優活動にも役立つ気づきが多くあったとの感想がありました。最終日には、一部をリーディング形式で読み、フィードバックをもらうことで、さらに作品への理解を深め、次のステップに必要な要素などを発見することができました。 

 

◆戯曲カイハツ

 23年度は『女性劇作家』にテーマを絞り、世界の戯曲をリサーチ、発掘し、翻訳しました。数ある候補の中から翻訳した作品は、アメリカとカナダの若手女性作家のもので、24年度には内部でリーディングを行う予定です。
 


◆創作プロセスカイハツ

 

▶劇団ヴァニシング・ポイントワークショップ

日英国際共同制作 KAAT×Vanishing Point 『品川猿の告白 Confessions of a Shinagawa Monkey』として2024年11月~12月上演

創作プロセスカイハツ:KAAT×Vanishing Point 国際共同制作ワークショップ写真

【テーマ】KAAT神奈川芸術劇場と現代のイギリス演劇を代表する劇団ヴァニシング・ポイントが、将来的な国際共同制作を視野に入れて、その創作の可能性を探る海外でのワークショップ

 

【開催日】2023年6月12日(月)-23日(金)(17日・18日休み)

【会 場】Tramway  ホール(イギリス グラスゴー)

【参加者】Vanishing Point Theatre Company:

マシュー・レントン(演出家)

マーク・メルヴィル(音響)、サイモン・ウィルキンソン(照明) 
サンディ・グライアソン(俳優)、阿部のぞみ(ドラマトゥルク)

ワークショップ参加者:俳優5名(うち日本人俳優4名) 
通訳1名、KAATスタッフ2名

【概要・成果】

前回のワークショップにおいて英国人演出家が日本人俳優とともに選定した日本現代文学作品を、日英の俳優達が初めて日英テキストの読み合わせを行い具体的な作品化に向かうためのリサーチ・アンド・ディベロプメントを劇団の本拠地である英国グラスゴーにて行いました。 
翻訳された日英のテキストを軸に二国間の文化・言語・身体的な相違を再発見し、その問題点を洗い出すことにより参加者と共に多くの実験を繰り返すことができた。本番に向けた稽古ではなかなか実施できないトライアンドエラーが実現できたことにより、2024年2月26日~3月8日に横浜で行われたクリエーションにおいて、今後の創作へ向けての豊かな時間となりました。

 

 

▶伊藤郁女×長塚圭史による、今後の新作公演(2025年)に向けたワークショップ

伊藤郁女ワークショップ写真
伊藤郁女×長塚圭史ワークショップ写真

【テーマ】フランスを拠点に活動する振付家・ダンサーの伊藤郁女と長塚圭史による今後の新作公演に向けたワークショップ


【開催日】2023年6月20日(火) 
【会 場】アトリエ 
【参加者】伊藤郁女(振付家、ダンサー)

ダンサー6名

 

【開催日】2023年7月20日(木)   
【会 場】中スタジオ 
【参加者】伊藤郁女(振付家、ダンサー)

長塚圭史(演出家、劇作家、俳優)

 

【概要・成果】

2021年より今後の新作に向けた構想をはじめ、今回もオノマトペや詩を題材に、演劇やダンスといった身体表現の新たな可能性を俳優とダンサーと共に探っていきました。
また作品の方向性を決めたりイメージを話し合ったり、具体的に内容を固める段階に入ってくるなど、今後の創作へ向けての豊かな時間となりました。

 

◆カイハツ・ワークショップ

▶ジャン=バティスト・アンドレ×瀬戸内サーカスファクトリー「重力と戦う身体ー身体バランスを用いたアクロバット」カイハツワークショップ:瀬戸内サーカスファクトリ―写真 
 【テーマ】フランスを拠点に活動する現代サーカスのアーティストのジャン=バティスト・アンドレによる重力と戦う身体を体験するワークショップ

 

【講 師】ジャン=バティスト・アンドレ 【通訳】田中未知子(一般社団法人瀬戸内サーカスファクトリー代表理事)

【開催日】2023年10月30日(月)

【会 場】ホール

【概要・成果】

サーカスアーティスト、ダンサーなど、身体を用いて表現活動している7名のアーティストがワークショップに参加しました。今回のワークショップでは、まず身体全体のウォームアップを行い、その後、床とのコンタクトでいくつかの動きを学びながら、水平から垂直へと向かっていき、「重さ」「重力」「支点」の感覚を身につけていきました。そして、シンプルなバランスの概念をベースに、ダンス的な動きをアクロバティックなアプローチと結びつけ、空間における身体能力を広げる発見ができました。

 

 

▶KAAT×国立劇場「文楽人形遣いを知る」 

カイハツワークショップ:文楽人形遣いを知る写真

【テーマ】さまざまな伝統芸能の上演と継承や普及を担ってきた国立劇場とKAAT神奈川芸術劇場が協働し、現代演劇やコンテンポラリーダンスのアーティストに向けた古典芸能ワークショップ

 

【講 師】吉田玉助、桐竹紋吉、吉田玉延、吉田玉征 
【開催日】2024年3月15日(金)

【会 場】アトリエ

【概要・成果】

最初に講師陣より文楽の歴史、人形の遣い方、人形の構造などについてのご説明があり、参加者が実際に人形を触らせてもらい、人形遣い体験を行いました。その後、仮名手本忠臣蔵「勘平腹切の段」より一部抜粋シーンの実演があり、人形の繊細な表情の変化や手の微かな震え、豪快な脚裁きなどを間近で見ることができ、圧倒されました。 
途中、質疑応答も交え、文楽の人形遣いの基礎的な知識を得ることができただけではなく、遣い手(演じ手)のリアルなお話から、後継者問題など文楽業界の全体の現状なども聞くことができ、伝統芸能をつたえつなぐための重要性をあらためて感じ、参加者からとても有意義な時間を過ごせたと感想をいただきました。

 

 

「カイハツ」のこれから

令和3年(21年度)から、KAATが新たに取り組んでいる「カイハツ」は、劇場が、上演の場そして上演する作品を創作する場のみならず、アーティストが常に考える場、豊かな発想を生み出す場となることを目指しています。この営みは、公共劇場の新たな価値や役割を探る、まさに劇場の未来を背負う取組みです。今後も、継続的に取り組んでいきます。

 

活動報告アーカイブ

>>2022年度活動報告

>>2021年度活動報告